社会保険労務士 江尻事務所
有限会社Ejissanキャリア研究所
(社)日本報連相センター会員(NHC503)
上江田 晋作
ただ報告や連絡をしても人は動きません。しかし、事情がわかれば人は動き、またその動き方の質も変わってきます。
今回は『情報によるマネジメント』について、ある方がお話していた例をご紹介します。
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化粧品の訪問販売で急成長したN社の、係長さんたちのリーダーシップ研修での話です。
わたくしの担当したグループに、青森営業所からこられた内勤の女性係長で、Tさんという方がおられました。
営業所は、多数のNレディと呼ばれるセールスウーマンと内勤のTさん、それに所長さんという構成です。
研修のなかで、Tさんが発表された、私のリーダーシップの現状把握のところに、「強みと弱み」として次のように書かれていました。
”私の強みは、「成績が急上昇した営業所や、いつも上位にいる所へ電話をかけて、どんなことをしているのか聞いて、それを営業の人に流していたことです。」
弱みは、「部下育成とか後輩の指導は、やっていましたが目先のことばかりで、長期的なことはしていませんでした。」”
これには、おどろきました。そして発表されたとき、素朴な青森弁のおばちゃんの、「本社にも知っている人がいますから、ときどきは本社にも電話して情報を聞いて、それも流していました。」という発言を耳にしたとき、心底感心しました。
毎週コンピュータで打ち出される順位表を、ただ眺めるだけの人が多いなかで、このTさんのされていることは、私が重要性を強調している『情報によるマネジメント』そのものです。
しかも、言われてやったのではなく、自分の意志で実行されていたのです。「弱み」の方に書かれていることも凄いですね。
みなさんのなかにも部下のいない方がおられるかもしれません。Tさんもそうです。
そして、内勤ですが、直接の部下ではないセールスの方たちに、積極的に情報を流し、指導もしているわけで、自分の仕事の範囲を自分で限定していないのです。
このTさんがおられるかぎり、青森営業所の業績は順調に推移することでしょう。
セールスの方は、「行ってまいります」と飛び出したら、もはや管理者の視野の外です。
連絡も意思疎通も十分にはとれません。そういう状況のなかで、とにかく、Nレディたちが、どうすれば働き易いか、どうすれば売れるのか、どうすれば自主的に自分で判断して働けるのか、・・・。これには、『情報によるマネジメント』が一番有効です。
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人は誰でも「理解欲求」を持っています。「なぜそうなのか」知りたいのです。
情報があり、状況が分かれば、だれでも判断はできます。
状況が理解でき、自分で判断したとき、自発的な動きが出てくるのではないでしょうか。
報連相の本質は「情報の共有」であり、それを意識して行うためには、目的思考や共有深度などが必要となってきます。そのために、従来の「報連相」とは異なる「真・報連相」は非常に有効です。