沖縄・労働市場モニタリングレポート
沖縄の労働市場の動き(全体版) 令和8年8月分
〜有効求人倍率は1.06倍、4か月連続の低下。建設業と正社員求人には動き〜
顧問先の経営者向け 対話で読む解説版出典:沖縄労働局「労働市場の動き」令和8年8月(令和8年10月2日公表)解説:社会保険労務士/医療労務コンサルタント/健康経営エキスパートアドバイザー 江尻事務所
令和8年10月2日に沖縄労働局から公表された「労働市場の動き」令和8年8月分を、江尾社労士とスタッフのさくらの対話で読み解きます。
江尾社労士
解説役。統計の読み方と、経営への活かし方をお話しします。
スタッフ さくら
聞き手。経営者の方が気になる点を、代わりに質問します。
さくら
先生、8月分の「労働市場の動き」が公表されました。有効求人倍率は1.06倍で、また下がっていますね。
江尾
社労士
季節調整値で4か月連続の低下です。ただ、下がった理由を取り違えないことが大切です。働き手が増えたのではなく、求人が減っているのです。
江尾
社労士
あります。建設業の求人と、正社員の求人に持ち直しがみられました。順に見ていきましょう。
今月のいちばんの注目点
求人全体が16か月連続で前年を下回るなか、建設業の新規求人数は前年同月比+27.9%(+180人)と伸び、正社員の新規求人数も5か月ぶりに前年を上回りました(+1.8%)。新規求人に占める正社員の割合は44.5%まで高まっています。
有効求人倍率(季節調整値)
1.06倍
前月比 ▲0.01ポイント(4か月連続低下)
正社員の有効求人倍率(原数値)
0.78倍
前年同月比 +0.01ポイント(1倍割れ)
医療・福祉の新規求人数
3,159人
全産業の月間充足数の約3.1倍
求職者に占める45歳以上
53.3%
前月53.3%から横ばい・高止まり
1.今月の全体像
さくら
まず全体の数字から教えてください。沖縄労働局は今の雇用情勢をどう見ているのですか。
江尾
社労士
基調判断は「沖縄の雇用情勢は一部で堅調な動きがみられるが、求人の動きに落ち着きがみられる。引き続き物価上昇等が雇用に与える影響に注視する必要がある。」です。前月と同じ表現です。主な6つの指標を表にしました。
| 指標(季節調整値) |
当月値 |
前月比 |
| 有効求人倍率 |
1.06倍 |
▲0.01ポイント |
| 新規求人倍率 |
1.81倍 |
+0.04ポイント |
| 月間有効求人数 |
27,671人 |
▲0.9% |
| 月間有効求職者数 |
26,127人 |
▲0.0% |
| 新規求人数 |
9,936人 |
+0.9% |
| 新規求職申込件数 |
5,497件 |
▲1.2% |
さくら
新規求人倍率は1.81倍に上がっています。これは良い知らせと受け取ってよいのでしょうか。
江尾
社労士
手放しでは喜べません。新規求人数が0.9%増えた一方で、新規求職申込件数が1.2%減っています。仕事を探す人が減った分も、倍率を押し上げているのです。
江尾
社労士
月間有効求職者数は前月から8人減と、ほぼ横ばいです。一方で月間有効求人数は246人減りました。倍率を下げたのは求人の側です。
出典:沖縄労働局「労働市場の動き」令和8年8月・資料1-2(就業地別・季節調整値)、本体2ページ。
2.正社員は「決まりにくい・埋まりにくい」
さくら
正社員の有効求人倍率は0.78倍、パートは0.84倍です。正社員のほうが低いのですね。
江尾
社労士
ええ。ただ今月は、正社員の新規求人数が4,134人で前年同月比+1.8%と、5か月ぶりに増えました。パートの新規求人数は3,054人で▲9.7%です。では、求人がどれだけ埋まっているかを見てみましょう。
■ 正社員■ パートタイム
さくら
就職率も充足率も、パートのほうが高いですね。
江尾
社労士
就職率は正社員11.9%に対しパート25.9%で、差は14.0ポイント。充足率は正社員8.2%に対しパート14.3%で、差は6.1ポイントです。
江尾
社労士
正社員の就職率は10.6%から11.9%に上がりましたが、充足率は8.3%から8.2%とほぼ変わっていません。求人が増えても、埋まる割合は上がっていないのです。パートは就職率が28.1%から25.9%、充足率が16.2%から14.3%に下がりました。
江尾
社労士
求人条件の見直しと、選考のスピード、情報発信の工夫です。新規求人に占める正社員の割合は44.5%まで上がっていますから、正社員の採用は競争が厳しくなりやすい状況です。
出典:資料8-2(正社員・就業地別)、資料9-2(パートタイム・就業地別)、本体3ページ(正社員求人の割合)。横軸は就職率30%・充足率20%を最大とした相対表示です。
3.医療・福祉は「物理的に」人が足りない
さくら
医療・福祉の新規求人は3,159人。飛び抜けて多いですね。
江尾
社労士
全産業がひと月に実際に採用できた人数、つまり充足数は1,009人です。医療・福祉の求人だけで、その約3.1倍にあたります。前月は約2.7倍でしたから、開きは広がりました。
■ 医療・福祉の新規求人数■ 全産業の充足数(採用できた数)
さくら
募集しても物理的に埋めきれない、ということですか。
江尾
社労士
そのとおりです。ひとつの分野の募集だけで、全産業の1か月分の充足を大きく上回っています。新規求人数の多い産業を上から5つ並べてみます。
| 順位 |
産業 |
新規求人数 |
前年同月比 |
| 1 |
医療,福祉 |
3,159人 |
▲2.8% |
| 2 |
サービス業(他に分類されないもの) |
1,095人 |
▲20.5% |
| 3 |
宿泊業,飲食サービス業 |
988人 |
▲12.0% |
| 4 |
建設業 |
826人 |
+27.9% |
| 5 |
卸売業,小売業 |
802人 |
▲6.1% |
さくら
上位5産業のうち、前年を上回ったのは建設業だけですね。
江尾
社労士
建設業は+27.9%、人数にして180人の増加です。反対に、サービス業(他に分類されないもの)は▲20.5%で282人の減少、製造業は▲22.0%で84人の減少でした。
さくら
宿泊業,飲食サービス業は▲12.0%ですが、中身はどうなっていますか。
江尾
社労士
宿泊業が▲17.3%、飲食店が+57.3%と、同じ分類のなかで対照的です。業種をひとくくりにせず、内訳まで確かめることをおすすめします。
出典:資料4-2(就業地別・産業別・全数)、資料2-2(就業地別・全産業充足数)。新規求人数が100人以上の産業のうち、前年同月比で最も減少したのは学術研究,専門・技術サービス業▲22.4%、次いで製造業▲22.0%、サービス業(他に分類されないもの)▲20.5%。増加は建設業+27.9%、教育,学習支援業+14.0%でした。
4.求職者の半数以上が45歳以上
さくら
仕事を探している方の53.3%が45歳以上なのですね。前月と同じ水準です。
江尾
社労士
有効求職者25,411人のうち、13,535人が45歳以上です。50%台前半での高止まりが続いています。
さくら
「若い人を採りたい」という声は多いのですが。
江尾
社労士
「若手が来る前提」だけで採用を設計すると、実際の応募層とかみ合いません。ミドル・シニア層の経験を活かせる職務設計と、勤務時間や体力面に配慮した働き方の用意が、採用力に直結します。
出典:資料13(職業別・常用の有効求人・有効求職バランスシート)。13,535÷25,411=53.3%は当所が算出。男女別では女性7,233人が男性6,288人を上回ります。
5.企業規模による二極化
さくら
新規求人の多くは、29人以下の小さな事業所から出ているのですね。
江尾
社労士
29人以下が全体の62.9%を占め、300人以上は6.1%にとどまります。前年から増えているのは500人以上の層だけで、499人以下はすべて前年割れです。
さくら
1,000人以上は+96.4%と大きく伸びています。
江尾
社労士
求人数は165人と少ないので、伸び率は振れやすい点に注意が必要です。地域の採用競争は、小規模事業所どうしの競り合いが中心だと捉えるのが実態に近いでしょう。
出典:資料4-2(就業地別・事業所規模別・全数)。数字は「新規求人数/前年同月比」。棒の長さは各規模の新規求人数(最大=29人以下)を相対表示したものです。構成比は当所が算出(端数処理により合計は約100%)。
6.地域による差(ハローワーク別)
さくら
地域別では、宮古が2.03倍、沖縄(中部)が0.88倍。ずいぶん開きがありますね。
江尾
社労士
差は1.15ポイントです。1倍を下回るのは沖縄(中部)だけです。
さくら
前年と比べて下がっている地域はどこですか。
江尾
社労士
下がり方が大きいのは八重山の▲0.28と、那覇の▲0.10です。前月に続いて、この2つの地域で弱含みがみられます。
さくら
同じ離島でも、宮古は上がっているのですね。
江尾
社労士
宮古は+0.08です。離島をひとまとめにせず、地域ごとに状況を確かめることが欠かせません。
出典:本体第4表(ハローワーク別・全数・原数値)。数字は「有効求人倍率/前年同月差」。棒の長さは宮古2.03倍を最大とした相対表示です。
7.物価の動き
江尾
社労士
那覇市の消費者物価指数は、総合で102.6、前年同月比+2.3%です。6月+1.5%、7月+2.1%、8月+2.3%と、上昇幅が広がっています。
江尾
社労士
食料が+3.8%で、全体を押し上げています。生鮮食品を除く総合でも+2.2%です。
江尾
社労士
賃金改定や募集賃金を検討される際に、ひとつの目安としてご確認いただけます。
総合(那覇市・令和8年8月)
総合指数102.6、前年同月比+2.3%。前月(+2.1%)から上昇幅が広がりました。
生鮮食品を除く総合
指数102.5、前年同月比+2.2%。前月比は+0.1%です。
持家の帰属家賃を除く総合
指数102.8、前年同月比+2.5%。前月比は+0.3%です。
出典:沖縄県企画部統計課「那覇市及び沖縄県の消費者物価指数の動向」令和8年8月分(表1・表3・表-7)。指数は令和7年=100です。今月分から、賃金(毎月勤労統計調査)と実質賃金の試算は掲載していません。
8.今月のまとめ
江尾
社労士
3点です。第一に、有効求人倍率は1.06倍で4か月連続の低下、主因は求人の減少です。第二に、建設業の求人が+27.9%、正社員の新規求人が5か月ぶりの増加と、一部に動きが出ました。第三に、産業のかたより、求職者の年齢構成、企業規模の二極化という3つのミスマッチは、今月も続いています。
さくら
中小企業は、何から手をつければよいでしょうか。
江尾
社労士
ミドル・シニア層を前提にした職務設計、物価上昇(那覇市CPI+2.3%)を意識した募集条件の見直し、そして充足率がパート14.3%・正社員8.2%と開いている現状を踏まえた雇用形態の設計です。
さくら
自社の場合はどうなのか、数字に当てはめて考えたい方もいらっしゃいそうです。
江尾
社労士
ええ。業種や地域によって見え方が変わりますから、数字をご一緒に見ながら考えていきましょう。
この解説レポートの監修
社会保険労務士 江尻事務所
健康経営エキスパートアドバイザー 医療労務コンサルタント
社会保険労務士として、労働市場の動きを踏まえた採用計画・賃金設計・就業規則の整備まで、沖縄の中小企業の実情に合わせて伴走支援します。人手不足が続く医療・福祉・介護分野の労務管理や、ミドル・シニア層・多様な働き方を前提とした人事制度づくりも、予防的な観点からお手伝いします。
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採用計画の見直し、賃金・労働条件の設計、就業規則や多様な働き方の制度づくりなど、本ページに関連するご相談を承っております。江尻までお気軽にご相談ください。
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