医療業・介護事業を運営される事業者の皆さまに向けて、沖縄の医療・福祉分野の求人・需給・賃金の動きをまとめました。介護・看護の現場では「募集しても人が集まらない」状況が続く一方、統計上の新規求人数は前年を下回っています。この一見あべこべに見える動きの意味と、採用・定着に向けた着眼点を、分かりやすく整理しました。
介護サービス職の求人倍率は4.09倍、福祉関連職全体でも3.65倍と、依然として深刻な人手不足が続いています。一方で、常用ベースの新規求人は医療業が前年同月比▲15.8%、社会保険・社会福祉・介護事業が▲9.9%と前年割れです。求人の「数」が減っても現場の不足感が変わらないのは、募集を出しても埋まらないため、事業者が求人を出し控えたり、確保済みの人員でやりくりしたりしている可能性がうかがえます。
今月の医療・福祉の新規求人数(全数)は3,054人で、前年同月比▲11.2%。内訳をみると、医療業は987人(▲16.4%)、社会保険・社会福祉・介護事業は2,060人(▲8.2%)で、いずれも前年を下回りました。医療業と介護事業はどちらも減少ですが、医療業の落ち込みがより大きい点に特徴があります。
| 指標 | 当月値 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 医療・福祉 新規求人数(全数) | 3,054人 | ▲11.2% |
| うち常用 | 2,960人 | ▲12.2% |
| うち医療業 | 987人 | ▲16.4% |
| うち社会保険・社会福祉・介護事業 | 2,060人 | ▲8.2% |
求人の勢いを常用ベース(前年同月比)の推移でみると、医療業は令和8年5月+0.9%→6月▲2.5%→7月▲15.8%と、直近で大きく低下しました。介護事業(社会保険・社会福祉・介護事業)は5月▲6.8%→6月▲5.5%→7月▲9.9%で、マイナス圏での推移が続いています。次のグラフは、この2系列の直近13か月の動きです(常用ベース。上表の全数ベースとは集計の基準が異なります)。
出典:資料4-2(就業地別・産業別・全数)、資料6-2(就業地別・産業別・常用・前年同月比)。グラフは資料6-2に直接記載された数値のみを使用しています(推定・補間なし)。常用ベースの当月値は医療業▲15.8%、社会保険・社会福祉・介護事業▲9.9%です。
職業別に、募集(新規求人)と応募(新規求職)のバランスをみます。介護・福祉・保健医療のいずれの職種も求人倍率が高く、とくに介護サービス職は4.09倍、福祉関連職全体でも3.65倍と、求職者1人に対して3〜4件の求人がある計算です。人材の取り合いが続いていることがうかがえます。
| 職種 | 新規求人 | 新規求職 | 求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 介護サービス職業従事者 | 732人 | 179人 | 4.09倍 |
| 保健医療サービス職業従事者 | 159人 | 41人 | 3.88倍 |
| 看護師(保健師・助産師含む) | 558人 | 207人 | 2.70倍 |
| 福祉関連職業 合計 | 1,889人 | 517人 | 3.65倍 |
| うち介護関係 | 1,140人 | 264人 | 4.32倍 |
出典:資料10(就業地別・職業別・常用のバランスシート)。求人倍率は新規求人数÷新規求職者数で、原典に記載の値です。
求職者が希望する賃金(求職希望賃金)と、事業者が提示する平均賃金(求人平均賃金)を比べると、介護・看護・社会福祉のいずれも求人側の提示額が希望額を上回っています。つまり、賃金水準そのものが応募のボトルネックとは言い切れず、むしろ求人票での条件の見せ方に改善の余地があるといえます。良い条件が求職者に十分伝わっているか、点検の価値があります。
| 職種 | 求職希望賃金 | 求人平均賃金 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 介護サービス職業従事者 | 201,290円 | 214,471円 | +13,181円 |
| 看護師(保健師・助産師含む) | 243,874円 | 263,499円 | +19,625円 |
| 社会福祉専門職業従事者 | 206,154円 | 232,469円 | +26,315円 |
出典:資料11(就業地別・常用フルタイム・月給)。差額(求人平均−求職希望)は原典の数値から当所が算出しました。いずれも求人平均が求職希望を上回っています。
毎月勤労統計(令和8年6月分・規模5人以上)で、医療・福祉の一般労働者の賃金をみると、きまって支給する給与は314,633円(前年同月比+3.6%)でした。現金給与総額(543,601円・+6.2%)には賞与など特別に支払われた給与の変動が含まれるため、月々の基調は「きまって支給する給与」でみるのが適切です。
| 医療・福祉(一般労働者) | 当月値 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 現金給与総額 | 543,601円 | +6.2% |
| きまって支給する給与 | 314,633円 | +3.6% |
| 所定内給与 | 291,006円 | +2.6% |
なお、医療・福祉のパートタイム労働者は、現金給与総額が172,504円(+21.0%)と大きく伸びる一方、きまって支給する給与は113,800円(▲10.7%)とマイナスでした。同じ月にパートタイム労働者数が前年同月比▲23.5%と大幅に減少しており、パート賃金の見かけの伸びには、働く人の構成が変わったこと(構成変化)の影響が含まれている可能性があります(断定はできません)。パート賃金は単月の数字だけで判断せず、動きを継続してご確認いただくのが安全です。
出典:毎月勤労統計調査地方調査結果 令和8年6月分・付表7-1(賃金)、付表11-1(労働者数)。規模5人以上・産業「医療,福祉」の値です。
労働時間(令和8年6月・規模5人以上・調査産業計)は、総実労働時間135.4時間(前年同月比+0.8%)、所定内127.4時間(+0.7%)、所定外8.0時間(+3.8%)でした。所定外労働時間の絶対水準(8.0時間)は、全産業でみても長くはありません。医療・福祉は交替制勤務などで所定内の勤務設計が中心となりやすく、残業時間の絶対量は相対的に短い傾向がうかがえます(本表は地方調査の実数として公表される調査産業計の値です)。
| 労働時間(調査産業計) | 当月値 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 総実労働時間 | 135.4時間 | +0.8% |
| 所定内労働時間 | 127.4時間 | +0.7% |
| 所定外労働時間 | 8.0時間 | +3.8% |
出典:毎月勤労統計調査地方調査結果 令和8年6月分・付表3-1(規模5人以上・調査産業計)。産業別の実数は地方調査では公表されないため、調査産業計を目安として掲載しています。
医療・福祉の常用労働者数(一般労働者)は86,704人で、前年同月比+1.3%。新規求人が前年割れとなるなかでも、働く人の数はわずかに増えています。入職率1.63%が離職率1.32%を上回り、全体としては純増の方向です。ただし入職率・離職率とも前年から低下しており(入職率△0.61ポイント、離職率△0.32ポイント)、人の出入りそのものが細っている点は、採用計画を立てるうえで押さえておきたい動きです。パートタイム労働者数は前年比▲23.5%と大きく減少しています。
| 医療・福祉(一般労働者) | 当月値 | 前年同月比・差 |
|---|---|---|
| 常用労働者数 | 86,704人 | +1.3% |
| 入職率 | 1.63% | △0.61ポイント |
| 離職率 | 1.32% | △0.32ポイント |
出典:毎月勤労統計調査地方調査結果 令和8年6月分・付表11-1(規模5人以上・産業「医療,福祉」)。入職率・離職率の「△」は前年同月差のマイナスを表します。
データで観測される事実として、医療・福祉の新規求人は3,054人と全産業で最も多いものの前年比▲11.2%、常用ベースでも医療業▲15.8%・介護事業▲9.9%と前年を下回りました。一方、介護サービス職の求人倍率は4.09倍と需給は逼迫し、求人の平均賃金は求職者の希望額を上回っています(介護+13,181円、看護師+19,625円など)。常用労働者数は+1.3%と微増ですが、パートは▲23.5%と大きく減少しました。ここから推測されるのは、求人数の減少が需要の縮小というより、採用が難しく募集を出し控える、あるいは限られた人員で運営している状況の反映という可能性です(断定はできません)。打ち手としては、まず採用面で、賃金は求職者の希望を上回る水準にあることを前提に、求人票での条件の見せ方を整えること。次に定着面で、勤務シフトや治療と仕事の両立支援といった賃金以外の条件を整えること。この2つを順に見直すことが、限られた人材を確保・定着させる近道になります。
求人票の条件設計、賃金・処遇改善、勤務シフトや治療と仕事の両立支援など、医療・福祉の人材確保に関するご相談を承っております。江尻までお気軽にご相談ください。
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